歯列矯正のためになるNEWS

矯正治療は痛いそうですから、治療を受ける本人が気にしていないのに、親の意見で痛い思いをさせるのはしのびなく、なかなか決心がつきません。
子どもが矯正治療を嫌う一番の理由は「痛み」ですお母さんのお気持ちは、よく分かります。矯正材料の開発で、三、四O年前に比べれば、痛みはずいぶん軽減されましたが、まだ、ゼロというわけにはいきません。
自分の悪い歯並びに自覚がなく、しかも、遊びたい盛りに治療した友だちに治療の印象をたずねても、治ったありがたさよりも、痛かった、わずらわしかったというマイナスの印象ばかりが返事として返ってくるでしょう。数年後、矯正治療は痛いと教えた友人はいい歯並びで、教えられて治療を始めなかった本人は、異常な歯並びのままです。
そのときになって、遅まきの治療を始めなければならないとしても、教えた友人は、責任はとってくれません。子どもの頃、矯正治療は痛いと友だちに教えられて、何年間も痛い思いをするのは大変だと、治療を断念した二八歳の女性は、それ以来ずっと気にし続けながら、現在に至ったことを後悔していました。
私のクリニックの患者さん八四人(平均年齢一六歳七か月)に、装置を着けてから二週間の痛みの変化について調査したことがあります。その結果、軽い痛みが26パーセント、強い痛みが69パーセントの人に発生していました。
合計すると、痛みを感じたのは95パーセントになり、まったく痛みを経験しなかった人は例外といえます。つまり、矯正治療では痛みがあることを覚悟しなければならないことになります。

痛みは、二時間後くらいから夜にかけて始まっていました。経過としては、強い痛みが三、四日、軽い痛みが二日、違和感が一日で、合わせて一週間でした。
最初から軽い痛みしかなかった場合には、違和感を含めて五日でした。大人では、市販の鎮痛剤の使用は本人の意志にまかせましたが、アメリカ人と違って、辛抱強いのか使用者はいませんでした。
このほかに、人によっては、月ごとの金属線の調整のたびに、歯を締めつけられるような痛みが、一日ありました。痛みによる食事の制約が7Oパーセントにみられ、平均期間は二、三日で、おかゆや軟らかいおかずをとっていたことになります。
肉類や繊維性のようなかみ締めを必要とする食べ物は、食べられなかったようです。歯の痛みのほかにも、唇や頬の内側の粘膜が装置との摩擦で荒れ、痛みが生じます。
この痛みは四、五日で消えますが、傷あとはしばらく残ることがあります。いつだったか、装置を着けたとき、子どもに痛くないか、痛くないかHと繰り返したずねていたお母さんがいましたが、これでは、痛くないものまで痛くなってしまいます。
一生かめない歯並びのまま過ごすのならいざいつかは治療しなければなりません。遅らせたからといって、痛みがなくなるわけではありませんから、四日の痛みを早く通過してしまうのがいいのではないでしょうか。
いい歯並びであればしなくてもいい苦労をすることになりますが、お子さんと一緒になって頑張ってください。治療で歯の根が短くなると、歯の寿命も短くなって早く抜けてしまうのではないですか。
日本では、矯正治痩による歯の根の服収などの副作用のデ−タが少なく、今後、問題になるのではないか、と聞きました。永久歯の歯根の表面を覆っているセメント質では、通常でも小さな吸収と修復が絶えず行われていて、問題になるのはセメント質の内側の象牙質に及ぶ吸収です。
歯根の先端に病巣があったり、歯に連続した強い力が加わったりすると、先端が短くなり、これを歯根吸収といいます。このときは、セメント質も象牙質も侵されます。
矯正治療で加える力もこのひとつです。全身的な原因としては、内分泌機能の異常や老化などがあります。

矯正治療による菌根の吸収について、説明します。ケッチャムは、一九二七年に菌根の吸収に関するはじめての論文を発表した矯正家です。
彼の名は、アメリカ矯正学会の功労者に贈られる最高の名誉であるケッチャム賞として残されています。このことで分かるように、歯根吸収は決してないがしろにされているわけではありません。
もちろん、日本にもいくつかの研究がありますが、どこの国の研究であっても、データには人種の境はありません。矯正歯科を扱っているどの矯正歯科医も関心を持っていて、例えば私たちのクリニックの案内書にも副作用のひとつとして記載しています。
歯並びをよくするためには、歯を動かす必要があります。それには、歯の周囲の歯槽骨の添加と吸収がなければなりません。
歯槽骨だけ変化して、同じ成分の歯根に影響がまったくないようにというのは厳しい要求ですが、この二、三O年の矯正材料の開発で、歯に加える荷重はソフトで持続性に富むものに変わり、歯根吸収は程度も頻度も少なくなりました。吸収はレントゲン写真上で分かりますが、軽いものでは歯根の先端が丸く、進行すると先端が横に切ったように短くなります。
例外的ですが、菌根の四分の一ぐらいに吸収のあった例もあります。発生の頻度としては、約20パーセント以上の人に吸収があったと報告されています。
もっとも多いのは上の中、側切歯で、下の中、側切歯がこれに次いでいます。吸収は、動かす距離、加える力の大きさと方向、期間が関係し、年齢の高い人のほうが低い人よりも多く、女子が男子よりも多いといわれます。
なお、治療していなくても、5パーセント強の人に歯根吸収があるといわれ、なかには、誰でも吸収のある歯が一、二本あるという報告もあります。矯正治療による歯根の吸収をかぎりなくゼロに近づける努力は大事ですが、現在の技術では、完璧な回避は不可能です。

歯の先端に吸収があるからといって、ぐらぐら動揺し、痛いというようなトラブルがあるわけではなく、レントゲン写真で確認できる範囲にとどまります。闘の寿命に影響を与えるような吸収は絶無に近く、むしろ歯並びがよくなることで、虫歯や歯茎の炎症が減少し、歯の寿命が延びると考えていいのではないでしようか。
はっきりとした吸収の例です。歯がぐらぐら動揺する乙とはありませんでした。
私は、矯正治療のメリットは、デメリットをはるかにしのぐと信じています。デメリットを恐れて治療しないのではなく、デメリットを知って治療を受けてほしいと思います。
虫歯になりませんか中学一年生の娘は八重酔です。毎日、歯磨きをしているので、今のところ虫歯はないようです。
矯正治療では複雑な針金を使うそうですが、歯が磨きにくそうで、虫歯いっぱいの歯になることはないのかと心配しています。矯正治療の副作用のひとつは「虫歯」の発生お母さんのおっしゃる通りで、いくら、いい歯並びになっても、虫歯だらけになったのでは、治療の価値が薄れてしまいます。
一時的に装置を取り外し、虫歯の治療をすませた後、治療を再開しました。十数年前に、治療前後の虫歯の発生率を調べたことがあります。
部位によって差がありますが、約15パーセント増加していました。治療しないときの増加率が約1Oパーセントですから、それよりも、やや上回っていました。
虫歯の発生は均等ではなく、一部の患者さんに多発していました。


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